左から 呂教授　佐々木博士　王教授

◇[目的]

青森県には日本海側に河口を持つ十三湖があり良質の大和シジミを産出する、また太平洋に面した小川原湖も産地である。そのシジミに肝臓機能の改善効果があることは動物実験で既に確認した１）。
さらに、焼成したシジミの貝殻粉末が「肝臓に効く」との言い伝えがあり、それが民間伝承として現在も利用されてきている。
焼成シジミ貝殻のカルシウムに肝臓機能の改善効果があるとすれば、カルシウムの生物活性に新たなる機能を付与することになり、未利用資源のリサイクルにも繋がり研究テーマとしては意義が大きい。
焼成シジミ貝殻について、焼成温度と結晶構造の関係、肝臓の機能に対する作用、およびその作用機序を解明するために実験を行ったところ、カルサイト型・焼成シジミ貝殻粉末にこれまで報告されていない幾つかの新しい生物活性が認められ、「多機能性カルシウム」である可能性が出てきた。

＊研究成果　アメリカでの論文

[考察]

カルシウムは骨形成や細胞内の情報伝達に重要な役割のあることは知られているが、その他の生理機能についての報告はほとんどない。カルシウムに関して「焼いたシジミ貝殻が肝臓に効く」との言い伝えが青森県にある。これはカルシウムが持つ新たな生理機能として興味があるが、科学的な根拠がこれまでに提示されていない。
それを確認すべく実験を行ったところ、焼成シジミ貝殻粉末に肝機能改善効果があることが分かった。カルシウムの持つこの作用は「カルサイト型・焼成シジミ貝殻粉末（CaCO3）」であることが必要条件であり、ホタテ、アサリの焼成貝殻・カルサイトにはその作用が見られず、焼成シジミ貝殻粉末に特有の作用であることも分かった。
カルシウムはこれまでは、骨との関係、またはカルシュウム摂取量などについて主に論じられ、肝機能との関連性などは指摘されておらず、それゆえ肝臓に対する作用機序などについても全く不明であった。今回、私たちが「カルサイト型・焼成シジミ貝殻粉末」を用いて取り組んだ動物実験において次のことが明らかとなった。

①カルサイト型・焼成シジミ貝殻粉末（CaCO3）の経口投与で肝機能が改善効果。
②作用機序として肝細胞の増殖促進作用（壊れた細胞の修復作用もあるかも知れない）。
③ＮＫ細胞の活性化、サイトカイン産生亢進など免疫系細胞を活性化作用。
④中性脂肪、コレステロールを下げる作用。
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